「……ちょっと、優しく、してみよう、かな」
だいぶ言葉に詰まりながらも、すごく抵抗はあったのだけれど、そう声に出して言ってみる。
単純すぎるくらい単純な先輩のことだ、“ちょっと”だけ優しくしたところで、その裏のあたしの企みには気づかないだろうと思う。
そうと決まれば、じゃあ、さっそく……。
ということで、普段はあたしから先輩に近づいていくことなんて絶対にないのだけれど、まずは手始めにそうしようと決めたあたし。
「何か手伝うことはありませんか?」と聞きに行くため、先輩の姿を探した。
すると。
「うっわ……。ナイわ、マジで」
その先輩ときたら、床に這いつくばるようにして身を屈め、けれどお尻だけは高く上げて、それを左右にフリフリと振りながら、よく分からない鼻歌まで口ずさんでいる。
おそらく、棚の掃除をしているのだろう。
けれど、その姿があまりにドン引きもので、あたしは先輩のもとにツカツカと歩み寄ると。
「ふんぬっ!!」
「ふべっ!まま、まことちゃん!? さすがにそれは、先輩でも泣きたくなっちゃう……」
「うるさい茨城。普通にやらんか、普段に!」
と、先輩のお尻を、スニーカーの裏でグリグリと踏んづけてやったのだった。


