けれど、いくら眠れないからといって毎晩飲むわけにもいかず、奈々に相手を頼むのもまた、親友とはいえ、気が引けるというもの。
もしかしたら、あたしが勝手に気に入らないと思っているだけで、本当は涙が止まらなくなるくらいの名作映画かもしれないし、だったら、眠れない夜のお供に試してみる価値はある。
羊を数えるよるりも、よっぽどいい夜だ。
そうして、返却されたらあたしが借りよう、と決めると、心はDVDからとたんに離れ、すぐさまクリスマスディナーへと切り替わる。
「七面鳥、食べてみたいなぁ……」
と。
いまだにお客さんがレジに来る様子はなく、またプチ休憩に入ったあたしは、イラストでしか知らない、まだ見ぬ七面鳥に思いを馳せる。
ケーキバイキングだって、かなりそそられる。
ただ、どうやって先輩に機嫌が悪かった理由を話さずに招待券を譲ってもらおうか、それ以前に、譲ってほしいと頼んだところで勝算はあるのだろうか、という、当面の課題は大きい。
「ぬわぁっ!!」
悶絶である。
こんなにも魅力的なディナーの招待券を当てるなんてちっとも思ってもいなかったから、あたしってば、普段の茨城先輩の扱い、雑すぎ……。


