淡い初恋

隣で寝息を立てて眠る彼を後ろから抱きしめた。彼が私のことを好きでなくても心が冷めきってたとしても彼の体はとても温かく、このまま温もりを感じていたかった。

暫くすると自分も寝入っていたことに気づいた。隣を見ると千堂くんの姿がなかったため、一瞬慌てたけど耳を澄ますとシャワーの音が聞こえたため私はホッと胸をなでおろした。

彼はシャワーを終え、こっちに戻って来るのが音で分かった。私は扉側に背を向けて寝っ転がると彼が来るのを待った。

だけど、千堂くんはベッドには戻らず支度をしているようだった。帰る支度を・・・。その瞬間、私は気づいた。

私と一緒に朝を迎えてくれない理由。千堂くんは、高梨希を思い出したのだと。

「な、なんで・・・。」思わず彼に声をかけた。「起きてたのか?」と彼が振り返る。「どうしてなのよ!!」私は嗚咽混じりに彼に叫んだ。「どうして!?なんで、あの子なの!なんでまだ初恋が忘れられないの!?私だって・・・私だって千堂くんのこと入学式で初めて見た時から好きだったのに!!どうしてなの・・・・・!?」

すると千堂くんは、冷めた目で泣きじゃくる私を見下ろすと「悪いけどお前の気持ちには応えられない。けど、出来る兄がいて、辛い思いをしてきたことに対しては・・・同情するよ。」と応えると部屋を出て行ってしまった。


私はその場で泣き崩れた。

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「本日は私達新入生の為にこのような盛大な式を挙げて頂き誠にありがとうございます。」

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「俺が教えてやろうか?」と彼女を抱き寄せ、からかう彼。

千堂くんは、道端で急に高梨希を抱擁した。

「やーだよ」と言って無邪気に笑う彼。

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好き・・・。あなたのことが、
千堂くんのことだけがずっと前から好き・・・だったのに。

千堂くん・・・・・。

たった一度だけでいい、

これが最後でも良いから・・・・

彼女にも向ける笑顔を私にも見せてくれたら・・・

他には何もいらないのに・・・


【もう一つの淡い初恋 完】