彼女がここにいるのは、家に帰る途中時間潰しに――まあ、世間が言う寄り道というものをしているからだ。

黒い制服に身を纏う雫は、着ている色とは正反対の白い携帯を夢中になっていじっていた。

さっきまで下校しながら携帯をいじっていたのだが、歩きながら操作するのに疲れ、こうして座りながら作業している。

使用しているのは、メール機能。

携帯電話には主に通話、メール、ネット通信があり、若い女性にはこのメール機能は欠かせない。

今ではそのメールに動画や着メロ、写真、デコ文字などなど様々な物を送ることも可能だ。

その上、送受信のスピードも上がり、メールのやり取りも容易となっている。

そういったこともあるのか、近年では一日何百というメールを送受信する人々もいる。

その大半が若い世代であり、雫もその内の一人である。

彼女は一日に何百ものメールを送受信する。

そのせいで、携帯を常に常時していなければ落ち着かない――現代の精神医学で言う携帯依存症というものだ。