「どうじで、どうじで、逃げるの? どもだちでじょ? あのびいっだよね。もう仮面をづげだぐないど。あれはうぞ? ねぇ?」

「う、う、嘘じゃあない! でも、美代には春香みたいにないのよ」

「なにが?」

「覚悟、勇気よ。春香みたいに今の自分を捨てる勇気がないのよ!」

「ゆうぎ? かぐご?」

春香はしばらく考えてから、顔を前に出した。

その姿は異様だった。

「なーら、がわりにはいであげる。みよの仮面を。これでおなじだね、みんなおなじだね」

その言葉が終わる前に、美代は逃げ出していた。

「嫌だ、嫌だ、死にたくない、死にたくない! やめて春香!」

叫びながら逃げるが、次の瞬間背中に体重が掛かる。

春香に後から倒され、そのまま道路に勢いよく倒れこむ。

「うっぐ」

腹を思いっきり打ち、美代は声を上げた。

意識が飛びそうになった。

そのまま飛んでくれたらよかったが、春香はそうさせてくれなかった。

美代の細い首に手を回し、鎌の鋭い刃を顎に当てる。