マー君(原作)

しばらくすると、奴が家から出て行った。

おそらく窓から逃げたと思ったのだろう。

そこでようやく、勇気は暗闇から外へ出た。

涼しい風が顔に当たる。

急に夕日の光を浴びたせいで、目が霞んだ。

手で夕日を遮り、ゆっくりと立ち上がった。

そこは窓辺の近くだった。

勇気が隠れていたのはクローゼットの中ではなく、窓辺の近くにある液晶テレビが置かれている背の低い棚の中だった。

棚といっても、左右に大きな戸がついており、中は、長方形の空洞になっている。正確にはDVDが入っていたが、18禁の。

「ふぅ、マジ死ぬかと思ったし」

肩を落とし、窓に背を向ける。

それから念のため携帯の画面を確認する。

もういないと思うが――。

そう思って見ると、信じられない光景が広がっていた。

いる。

奴が――。
 
いる!

画面には窓が写されていた。

自分の部屋の。

そこに壁をよじ登ってきた奴の姿があった。

勇気は恐る恐る後を振り返った。

夕日を全身に浴びたあの仮面の女が言った。

「みーづげだ」

勇気は次の瞬間絶叫していた。

「うっ、わああああああああー!」

その声は夕暮れの鴉の忙しない鳴き声を一気にかき消した。