マー君(原作)

「何?」

機械口調で美代に尋ねる。

美代手の甲で涙を拭いながら、裏返る声で謝った。

「ゴメン、ゴメンね、春香。私、もう耐えられない。春香がこんな目に会うなんて」

コイツハナニヲイッテイルンダ?

春香はロボットのように美代の言葉を認識し、処理した。その結果これは同情という言葉であることがわかった。

ただ、それだけだ。

他に何もない。

「春香、わ、私、もうだめ、こんな自分演じ切れない。私、もう――」

エンジル? ナニヲイッテイルンダ、コノオンナハ?

春香はとうとう美代の言葉を処理できなくなり、その場から立ち去った。

教室を出てしばらくすると、後から誰かが呼ぶ声が聞えた。

だが、もはやどうでも良かった。

早くあっちの世界にいる自分に会いたかった。