マー君(原作)

春香が再び学校に登校してくると、またいじめが始まった。

勇気一行によるいじめは体にこたえたが、そんなこともはやどうでも良かった。

奴らは私をいじめているつもりなのだろうが、私の心はこの世界にはない。

ワールドエンドという仮想世界にあるのだ。

だから、もう私は苦しくない。何も――。

そんなある日の放課後、帰宅しようと席を立つと、呼び止められた。

その声で、教室に私以外にも人間がいると気づいた。

そいつは、勇気と一緒に私をいじめている美代だった。

彼女は悲しそうな表情でこっちを見ていた。

春香と美代以外、教室にいなかった。

夕暮れ時で、眩しいオレンジ色の光が薄暗い教室に差し込んでいる。

開いた窓からそよ風が流れこみ、カーテンを揺らす。そんな中、春香と美代は対面した。

しかし、春香は美代が黙ったまま何も言わないので、そそくさに教室を出ようとした。と、その時腕をつかまれた。

美代に――。

振り向くと、美代は泣いていた。

彼女の涙は始めてみた。が、今の春香にはそれが涙とは認識できなかった。

もう、春香は人間の心を持っていなかった。

この世界において――。