マー君(原作)

開いた窓から涼しい風が流れこみ、春香の髪を揺らす。

春香は死人のような目を眩しすぎる青空に向けていた。

空は雲ひとつない青天だ。どこかで飛行機が飛ぶ音が聞える。

それに蝉の鳴き声も――。

外の世界はあまりにも美しい。

この学校という世界とは別な世界に思えてくる。

春香はぼうと青空を見つめた。

私もあんな空になりたい。

強い太陽が青空をいっそう活き活きとさせている。

しかし、日差しは春香の心までは変えてくれなかった。

暖かい日差しが背中に当たって気持ちよい。

背中に少し汗をかいていたが、風が癒してくれる。外の世界は自由だ。

この私がいる世界よりずっとずっと、ずっとずっと……。

春香は瞳を閉じた。瞼に熱い光を感じた。それでももう瞳を開けたくなかった。

もうこの世界から消えてしまいたかった。

こんな偽りだらけの世界から――。