彼は口元についた血を手で拭いながら黒板の前に立った。

スポーツ狩りをした頭、きつい目付き、高い鼻、にやついた口、六年生にしては大人びいていた。服装は黒いマントを着ている。

彼は笑いながら、ノートパソコンを見下ろしながら説明した。

「クククク、僕は目覚めたんだ。

マー君にね。

君らは知らない。僕の本当の素顔を。いつも真面目な生徒を演じてきたことを--」

金田が話している最中もノートパソコンから黒い物体が外に出てこようとしている。

「先生?」

桂子は急に呼ばれてびくついた。気付けば金田が自分を見下ろしていた。その目は恐ろしく冷たく、きつかった。

「先生は、僕のことどんな奴だと思ってた? 友達思いな優等生? リーダー的存在?」

「金田君--」

「いや、やっぱり答えなくていい」

桂子の言葉を遮り、片手で顔を覆い隠した。何がおかしいのかクスクス笑っている。

「そいつは、そのノートパソコンから出てきてる奴は、マー君だよ。かなり重度の感染だ。と言ってもマー君は--」

顔から手を離すと同時に白い仮面が顔を覆い隠した。その途端、怪しい雰囲気が彼を包み込む。くぐもった声が仮面越しに聞こえる。