マー君(原作)

「春香、返事しなさいよ! 勇気様があんたに声かけてやってんだからよ」

金髪の女――昭子がいきなり春香の髪を掴んだ。

春香は堪らず、顔をしかめた。

「ったい!」

「え? なんか言った?」

春香の背後に立つ茶髪の女がゲラゲラ笑う。

その様子を見て、勇気が笑いながら止めに入る。

「おいおい、あまりいじるなよ。俺のかわいい犬によ」

今や春香は犬呼ばわれしていた。

それもクラス皆からだ。

春香は耐え難い屈辱を覚えつつ、勇気を睨んだ。

その顔を見た勇気は、薄っすらと笑い、今まで黙って春香を見ていた黒い長髪の女に顎で指示した。

「やれ」と。

しかし、彼女は女子三人組の中で、大人しいタイプで、暴力を振るうのにためらった。


それもそのはず、春香とその黒髪の女子は友達であり、仲もいいほうだったからだ。

「美代、やめて」