マー君(原作)

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桂子は休み時間のにぎやかな廊下を一人途方に暮れて歩いていた。

端から端まで並ぶ窓から日差しが指し込み、リノリウムの廊下に生徒達の笑い声と、足音が響き渡っている。

そんな中、桂子はマー君のことや、誘拐された生徒のことを考えていた。

しかし、廊下の端を歩いていると、時折すれ違う生徒が声を掛けてくるため、あまり考えに没頭することはできなかった。

「マー君……いったい何者なの?」

マー君。

名前しかわからない。どういう姿をしているのか、どんな人なのかも、何もわからない。

それなのに、今やマスメディアはマー君の話で溢れ返っている。そして、それは現実にも影響を及ぼしている。

現にこの学校の生徒がマー君と名乗る人物に誘拐されたのだから……。

廊下を歩いている内に、自分の担当する教室の近くまで来ていた。

この学校は四年から六年生の教室までが二階となっており、四年から下の学年は一階となっている。

いつの間に階段を上がっていたのだろう。階段近くの教室――四年一組が右手にあった。そこから五年、六年と一組、二組の順で教室が並んでいる。