そして、先程のマー君の放送。学校側としてもこれ以上マー君について隠している訳にはいかなかった。マー君は今までになく大胆に動いており、あの犯行声明もある。

桂子は顔を曇らせ、更に言葉を続けた。

「そして、昨日とうとうマー君の手がここまで伸びてしまいました。誘拐された生徒は今だに見つかってません」

生徒達が食い入るように前かがみになる。そんな子供達に桂子は気味悪さを覚えた。マー君は今や子供達の間ではかなり有名になっている。

しかも人気者としてだ。

まるでヒーローのように慕っている。

そのマー君が事件を起こしたのだ。それが本物であれ、偽者であれ、子供達にとってはこれほど興味を注がれる事件はない。

桂子は少し間を置いてから、言いづらそうに口を動かした。

「ですから、我が校では今後マー君の噂が消えるまで、登下校時は集団登下校を心がけてください。

もちろん、保護者の方や先生達も警備しますので、皆さん安心して学校に来てください」

もし、誘拐された子供が自分の教室の生徒だったらと思うと、胸が痛くなる。本当はこの事件が解決するまで生徒達を学校に来させたくなかったが、社会はそう都合よく回らない。