「はーい! 皆着席!」

都会にある道田小学校の六年二組では、いつもより遅めのホームルームが始まろうとしていた。教師が生徒を座らせ、私服を着ている生徒達が各々席につく。

教壇に立つ女教師は白い顔を引き締めたまま席についた生徒達を見渡す。

二十七名の生徒達が女教師を真剣そうに見返している。いつもなら席についても教室の後ろの方から話し声が聞こえるが、今日は違う。

朝から教室には張り詰めた空気が満ちている。

女教師――三原桂子は静かすぎる教室をもう一度見渡すと、重い口を動かした。

「今日の連絡ですが、皆さんも知っていると思いますが、最近マー君と名乗る不審な人物が世間を騒がせています。犠牲者は増えるばかりで、その対象は未成年者ばかりです」

話を真剣に聞く生徒。

どうやらマー君の話をするとわかっていたようだ。

それもそのはず、先程マー君による犯行声明がテレビで流れてたのだから。どこから情報を得たかは知らないが、今や学校はマー君と黒の仮面の話で持ち切りだった。

それに昨日我が校の生徒が一人、マー君に誘拐されたこともある。

本来なら今日もいつも通り登校させるはずだったが、その件があり朝から学校に取材やらなんやら人が集まり、今日は昼前からの登校になったのだ。