荒らし編
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「ねぇ、マー君」

暗い部屋で囁く声がする。デスクの上に置かれているノートパソコンからぼんやりとした明かりが漏れている。その明かりに包まれるように一人の少年が立っている。

彼の顔には白い仮面がつけられている。手には鎌が握られている。その鎌は血で濡れていた。ポタポタと鮮血が暗闇の中に滴り落ちる。

足元には赤く染まった白い布袋が置いてある。それには何か入っており、盛り上がっている。しかし、動いていない。暗闇に静かに佇んでいる。

少年は血のついた仮面をパソコンの画面に向けたまま言葉を続ける。

「……僕はやるよ。君がこっちの世界に出てこられるように、頑張るよ。君は僕のただ一人の友達なんだから。そして、僕はマー君なんだから」

鎌を仮面の前に掲げ、血の滴り落ちる様子を眺める。その様子は異様だった。明かりに照らされたその光景はこれからの惨劇を予知させるようなものだった。

「クククク、やってやる。僕は、マー君。現実上の殺人鬼――。ネット上の殺人鬼マー君に変わってお前ら、人間に復讐してやる。これからマー君の時代がやってくるんだ。フフフフ、アッハハハハハハ!」

不気味な笑い声が部屋に響き渡る。その笑い声はいつまでもやむことなく続いた。