一気にしゃべった後、吉沢は怒りを沈めるように息を整え、洋太から離れた。そして背を向けたまま静かに告げた。

「もう−−時間の問題だ。今までマー君について世界は誰かに責任を押し付けたがっていた。当たり前な話だが。民衆を安心させるのが政府の役目だからな。そして、その的が見つかったんだ。的があれば狙わない奴などいないだろ?」

「俺にどうしろと?」

洋太は乱れた襟元を直しながら、吉沢の背中に問いかけた。吉沢はすぐ答えなかったが、ゆっくり洋太を振り向き話しだした。

「我々が出来ることはもはや証拠をデリートするしかない。この施設にいるオリジナルのマー君をデリートする。そうすればあとはネット上の殺人鬼だけだ。ネット上をさ迷う奴なら、証拠は出ない」

「それって−−」

「ああ、オリジナルのマー君をデリートしたら、もうネット上の殺人鬼を止めることはできない。つまりジ・エンドだよ。だから、貴様にはこれからある男に会って貰う。そいつから情報を聞き出せ。早急にだ」

そう言い、側にあったドアに近づきズボンのポケットから鍵を取り出し、閂を開けた。