「強い想い−−意志があれば、Mウィルスなどただの光に過ぎない。それは心虫の卵を孵化させるには、心虫の成長を促す『恐怖心』、つまり『恐怖』が必要なのです。

Mウィルスは言わば恐怖というウィルスなのです。

ですから、だから強い想いが必要なのです。それは恐怖すら跳ね返す力を持っている。

だから、感染しない人は強い想いを持っているんですよ。

まあ例外もあるでしょうが」

そう言いながら、赤いドアを見るようにして洋太に背を向ける。

「でもやはりMウィルスの感染はマー君に対する恐怖に変わりない。

だから、今『ネット上のマー君』はネットを通して世界中に自分の恐ろしさを伝えている。

今やネット伝説と呼ばれているようですが」

まるでマー君が二人いるような言い方だが、それは感染者を意味しているのか?

まあ、何にしろ。

ネット伝説。マー君を中心にした伝説。これが、マー君の狙い。

恐怖を拡散し、膨脹させる。

それによりマー君に対する恐怖心が募る。

今までに起きた様々な事件−−チャット、メール、ネットゲーム−−。全てはマー君に対する恐怖心を向上させ、人の想いという力を飲み込むため。

人の脳に住む心虫の卵を孵化させるために。しかし、意思の強さにより卵が孵化しにくい人がいること。

洋太が話を整理していると、ジョーンが弱々しく説明した。