マー君(原作)

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「な、なんのつもりだ? それは−−」

洋太は自分に向けられている銃に、体が動かなかった。目の前に立つ吉沢は冷酷な目つきで銃を握り絞めている。

「今貴様は何を感じた?」

「な、何って−−」

洋太は訳がわからなかった。いきなりこんな物騒な物を突き付けられて平気な訳がない。

普通な人間なら俺みたいに−−。

「今貴様が感じているのは死−−恐怖だ。だから貴様は動けない。死ぬのが怖いから。

否!

それは結果であり動けない理由ではない」

そう言い銃を下ろす。すると洋太の金縛りも解けた。

その様子を見ていた吉沢が、銃をしまいながら説明する。

「貴様が今動けなかった理由、それは恐怖だ。貴様は希望を失う程の恐怖を感じたはずだ。

何もかも失うと。

だが、何もできなかった。恐怖が貴様を支配していたからだ。

絶対的な恐怖を目の前にした時、人は何も見えなくなる。

自分の命さえ」

命さえ−−。

洋太はさっき感じた恐怖を思い出した。確かに俺は動けなかった。死ぬと思ったから。

だが、それは自分の命の重さを知った上で感じたものではない。

ただ恐怖した。

死ぬ−−そう恐怖した。