足でドアを蹴る。

何度も蹴る。

それでもドアは開かない。勝田は運転手に掴みかかり、無理やりこっちを向かせた。

「おい! 早くドアを――」

運転手の顔を見た瞬間、勝田は凍りついた。その顔には白い仮面がつけられていた。

運転者は首を傾げ、平然と言った。

「どうかしましたか? お、客、さ、ん」

勝田は運転手から離れ、ドアにしがみついた。その間にもバックミラーに写る子供のマー君が勝田の左腕をのこぎりのように切っている。

大量の血が車内に飛び散る。

「安心してよ。だって君はこの腐りきった現実から逃げたかったんだろ?

これはその代価さ。この痛みが過ぎたら、君は自由だ。

もう苦しむこともない。

君が望んだ世界に行けるんだよ。だったら!」

そう言いながら、マー君は手に力を入れ、一気に勝田の左腕を切り落とした。

勝田は一瞬時が止まったかのように思えた。

気付けば、そのもぎ取れた左手を見て絶叫した。

「こんなの、嘘だあああああああああああああああああ!」

その叫び声の中、前を向いた運転手が告げた。

「このタクシーの行き先は地獄となっております」

自殺サークル編終わり