良一は窓に背を向け、震えあがっていた。

すぐ目の前に仮面がある。

その仮面からシュシュシュと嫌な息遣いが聞える。

だが、それだけではなかった。

よく耳を澄ますと、それが何か言っているのが聞えた。

ム・カ・エ・ニ・キ・タ・ヨ

そうマー君は言っていた。

その声を聞いた良一は、全身の毛が逆立つような思いがした。

気づくと、空中にいた。

どうやらマー君から逃げるため、窓に体当たりしたようだ。

上に割れた窓が見える。そして割れた破片が良一の周りを囲んでいた。

窓からはマー君がいとおしげにこちらを見下ろしている。

そこで、ようやく良一は理解した。落下していると。

思わず大声で叫んだ。

声が枯れるまで。

「うわわわああああああああああああああー!」
 
夜の町に良一の叫び声が響き渡った。
 
その直後に良一の部屋に誰かが入ってきた。

中年の男でパジャマを着ている。彼は良一の父親で、息子の叫び声を聞いてやってきたのだ。

「良一!」
 
急いで、窓に近づき、下を見る。

しかし、その時には遅く、良一の体の一部は変な方に曲って倒れていた。

「良一!」