歳とあってか全身の痛みが全く引かない。

歩く度に頭に響く。口の中が切れているようで、鉄の臭いがする。額にかいた汗が腫れ上がった顔の傷に染みる。

その上から涼し気な夜風が当たり、傷を癒す。

「……死にたい、こんな世界は、もう嫌だ」

毎日のように口にしている言葉だったが、今日は特にそう思った。

勝田は最近生きることに疲れていた。毎日同じことの繰り返し。退屈すぎて死にそうだった。別に生活が苦な訳ではない。

ただ、死にたいのだ。

生きる楽しみが何もないのだ。

何も。

ただ空気を吸って心臓を動かし続けることしかすることがないのだ。だから、死にたかった。

生きる理由がないから。

壁伝いに自宅についた頃には、傷の痛みもだいぶ収まっていた。勝田は鉄格子を開け、暗い家に入る。

二階建ての極普通の家だ。隣の家と大差ない。

赤い屋根に白い壁、リビングの前には小さいが庭もある。家の周りは背の高い石塀に囲まれている。

隣の家との間隔が狭く、窮屈に感じるが、それも生きていく上ではさほど問題ではない。