自殺サークル編
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死にたい……。

いつも思っていることなのに、できない。自分にはそんな勇気はないのだから。

橘勝田は、何年も通りつづけている帰路をとぼとぼと歩いていた。

夜中の住宅街は無音の世界だ。外灯の心細い明かりが道を照らしている。

勝田は四十代半ばで、小太りした腹がスーツをきつく締め付けている。全身はぼろぼろだ。着ている茶色のスーツは所々破れ、汚れている。

ついさっきおやじ狩りに会ったのだ。生涯始めての経験だった。だからか、ショックもひどかった。

おやじ狩りに会ったのは、この近くの公園だった。毎日近道と思い公園の中を通って帰宅していたが、今日は違った。

公園の中腹辺りまで来た所で、数人の若者に囲まれた。皆変な仮面をつけていた。

血のような赤いインクがついた白い仮面――。

最近若者の間でマー君という話がはやっているようだ。その影響なのだろう。勝田はふてくされながら、痛む腹部を押さえる。

「なんで、私がこんな、目に……」