マー君(原作)

それから、助手席に置いてあったマッチ箱を取り、一本擦って煙草に火を付ける。あとは手を振ってマッチの火を消す。

「じゃあ、お前が行くか? ブタ太」

ブタ太と呼ばれたのは小太りの男だ。あだ名なのか、あまり気にしない様子だ。本名は組織内でも誰も知らない。吉沢もまた。

ブタ太は最近マー君の動向がわからず、情報収集に苦戦していた。

更に、ターゲットである葛西洋太の警護もまた困難を極め、マー君を釣る餌として監視していた上田良一の行方もわからなくなった。

今やこの惨劇を止める手がかりは、怪奇出版の動向と上田良一の友人と推測され、今もっともマー君に狙われている洋太の監視しかすることがなくなっていた。

警視庁生活安全系内インターネット監視特別捜査隊の動向も気になるが、上に口止めしているから当分マー君に関する情報漏れはないだろうが。

それでも監視特別捜査隊の話によれば、恐ろしいスピードでネット上にマー君の噂が広がっているようだ。組織上層部もかなり手を焼いている。

メディア関係者には被害者面をしてろと命令していると、それもいつまでもつかわからない。

ブタ太は耳からヘッドホンを外し、苛立ちを抑えるように顔をしかめながら言った。

「あーあ、そうですね。けどな、今やばい状況なのに変わりないんだぞ。ハッカーの所在もわからない。監視対象の上田良一も消えた。

更に、この怪奇出版……。マー君だって被害が増加してきているし、このままこの状況が続いたらいずれ本当のことが――。

とにかく、やばい状況さ! わかってんのか? ずっとあいつらのことを監視してきてるけど、このまま情報が漏れ続ければどうなるか。

そんな暢気にしていられるのも今のうちさ」