マー君(原作)

このマー君が本物なら、今できることは――。

耳に携帯電話を強く押し当てる。

そこまでしなくても向こうの声は聞えるのだが、冷静に判断できなくなっていた。

少し気を緩めたら、自分もマー君に殺される、そんな気がしてならなかった。

耳の奥にコール音が響く。

一回コールが鳴る。

二回、三回、四回……。

いくら待っても出ない。

どうなってるんだ?

その間に、またマー君が出てきた。

どうやらバッハもやられたらしい。

それとも逃げ切ったか、どちらかだが。あまりいい方には考えられなかった。
 
マー君>ギェヘヘヘ、あいつ、口調から女だと思ってたら、ネカマ(ネットで男が女の振りをすること)だったよ。

その上、気持ち悪い顔して。君にも見せてあげたかったよ、バッハの顔。

まぁそれは君も同じか、アツシ君。

電話なんかしてないで、早く僕と遊ぼうよ。

良一は目を疑った。 

「なんで、俺が電話しているのがわかった?」
 
すると、電話のコール音が止み、声が聞こえてきた。良一は勢いよく志保に話しかけた。知らずうちに大声になっていた。

しかし、耳に聞えてきたのは……志保のものではなかった。