マー君(原作)

そう簡単にマー君が許すはずがない。

あの有名なコックリさんとて、途中で逃げ出すことは災いを意味する。

それをバッハがしたのだ、自分達がしているのはそういうことだ。

マー君という殺人鬼を呼び出したのだ。

改めてこの遊びの意味を知ると、良一はぞくっと寒気を覚えた。

さっきまでかいていた汗が肌寒い。

エアコンをかけっぱなしにしているせいもあるが、何故か急に部屋の温度が急激に下がったような気がした。

これが恐怖する、ということなのか? 

それからしばらくしても、バッハはチャットルームに戻ってこなかった。

遊びなら「ざまーみろ」とか言っていたかもしれないが、これは違う。

これは、本当の出来事だ。

良一はもう限界になり、ズボンのポケットから携帯電話を取り出し、志保に電話を掛けた。

初めて話すが、躊躇などしていられない。

今は緊急事態なのだ! 

まだ今ならまだ志保を助けることができるかもしれない。

もう二度とあんな光景は見たくない。

友達を見捨て、自分だけ逃げる姿なんか――。