マー君(原作)

<19>

「ねぇ、お兄ちゃん、ねぇったら」

「ん、んん?」

桐原は暗い視界が明るくなるのを感じた。

まるで暗闇の中から太陽の下に引きずりこまれた、そんな錯覚に襲われた。

周りが光に包まれている。

まだ視界がはっきりしない視界の先には、一人の少年がいた。

彼は小学生低学年に見えた。丸い背中がうごめいている。

何かをいじっているようだ。

桐原はその少年の背後に近寄った。恐怖はなかった。

むしろ暖かかった。

さっきまで溺れかけて、冷え切っていた体が温かかった。

そして、心が痛かった。

罪悪感に押しつぶされなほど。

「どうした、祐」

祐と呼ばれた少年は、今までいじっていた小さな宝箱を桐原に差し出した。

それは祐の手に溢れんばかりに見えたが、桐原が持つと両手に収まってしまいそうなものだった。

作りは古い木造で、さび付いた金具が使われていた。

海賊の宝箱の縮小盤のようなもので、作りは丈夫で、ちょっとやそこらの衝撃では壊れそうになかった。

上部の蓋に小さな鍵穴がある。

だが、肝心の鍵がない。