マー君(原作)

もう時間が経つ感覚もわからなくなってきた。

正確にはどれぐらい時間が残されているかわからないが、もはや天井がすぐ目の前に見えている。

天井の壁は少し変わった形をしており、壁に七つの長方形の扉がついていた。

桐原の左から○、△、◇、☆、◎、■、×と、それらは扉に白い発光性の水性のインクらしきもので書かれており、水に触れたらあっという間に消えてしまう、そんな物に見えた。

きっと、この扉のどれかが出口に続いているのだろう。

だが、それがなんだというのだ。

現状自分が得ている情報は何に等しい。

しかも、それらの扉と扉の間隔はかなり空いており、一度間違えたら、終わりだ。

それが水の中なら――。

桐原はすぐ、手を伸ばせば扉に手がかかりそうな所まで浮かんでくると、目を閉じた。


水位はついに天井につくほどまで上がっていた。

あと三十秒もすれば完全にこの空間は水で満たされる。

しかし、桐原は目を閉じたまま動かなかった。

もう何もできなかったから。

もう何もかも疲れから。

もう諦めてもいいと思ったから……。

次の瞬間水が顔を覆い尽くした。

ついに、空間が水で満たされたのだ。