マー君(原作)

しかし、いくら待ってもAIは出てこない。

まさか、本当に殺されたのか?

マー君に。

良一は震える手を動かし、もう一度呼びかけた。

 
アツシ> A……I?
 
マー君> 呼んだかい?

AIなら今死んだけど。

フフフ、実に馬鹿な男だったよ。

いっぱしの大人でありながら、この僕を馬鹿にするとは、身のほど知らずなやつだ。

やっぱり、人間は馬鹿だね。僕に逆らうなんてさ。

さーて、次は誰かな?

君かな、アツシ君?
 

良一はこの場から逃げ出したい衝動に 駆られた。

ここで電源を切り、部屋から逃げ出せば、助かるかもしれない。

だが、志保はどうなる? 助かるか?

また見捨てるのか?

昔の記録がフラッシュバックする。

助けを求める友達が小屋の中に引きずりこまれていくのを――。

あの時すぐに助けにいっていれば、彼は行方不明にならずにすんだかもしれない。

だけど、今度は、今度は――。

小刻みに震える手で、なんとかキーボードを打つ。
 
続けるしかない!
 
逃げるな。

逃げるな。

逃げるなっ!前を向け。

こうなったら、続けるしかないんだ。

もう二度とあんな思いは――。

今度こそ、助けるんだ! 大切な人を。それが、あいつの、せめてもの――。

そう決心して、Enterキーを押した。