マー君(原作)

<6>

・・・・・・嫌なことを思い出した。

良一ははっとして目の前のパソコンの画面を見た。

さっきAIがマー君に悪口を言った台詞がまだ画面に表示されていた。

そしてその文の下にはもう一つ――。


マー君> 誰だ、僕の悪口言っている奴は?

 
いきなり、マー君と名乗る人物がチャットに参加してきたのだ。

誰かのいたずらだ。

そう思いたかった。

しかし、マー君のIP(アドレスみたいな物)がここにいる四人のどれとも一致しなかったのだ。

そうなると、暗証番号を入れなければこのチャットムールに入ることはまず不可能だ。だとすると……。

良一は背中にシャツが張りつく感じを覚えた。
 

アツシ> あ、あなたがマー君? 誰かのいたずらとかじゃあ……。
 
マー君> 僕はマー君だよ。

君たち、僕の悪口を言っていたようだね。

じゃあ、まず、誰から消そうかな。

 
やはり、冗談じゃあない!
 
一瞬、過去の記憶が蘇る。

友達があの小屋の中に引きずりこまれていくのを。

良一はさっき拭ったばかりの手がまた汗でまみれているのを無視して、キーボードを打ち込んだ。

今度はバッハと広美のほうが早かった。