マー君(原作)

「いや、警戒しなくていいよ。私は皆に呼びかけた者だよ」

中年の男は握手を断られたことにいささか顔を渋ったが、すぐに微笑んで手を引っ込めた。

それでも、桐原達が警戒を解かないので、彼は片手を髭で覆われた顎に当て、苦笑いしながら言った。

「そうだね、私は……あ――Xだ。もちろん本名ではないがね」

一人で馬鹿みたいに笑っていたが、KPSの言った通り自分の情報を教えようとはしない。例え本名だとしても。

本名だけでもわかれば、もしニュースなどどこかで聞いたことがあれば、その人物像がはっきりするかもしれないからだ。

例えば逃亡中の殺人鬼の名前など。

そのため、桐原も自分の情報を教えないように気をつけて、更に相手の情報を探るように話した。

本名はもうKPSに知られているため、そのせいかこの中年の男より不利な立場にいるようで仕方がなかった。

「んで、Xさんは今まで一人で?」

Xはようやく笑うのを止め、桐原達に真剣な眼差しを向けた。

「ああ、私ももう一度皆に呼びかけてみようと思ったが、キラーがね。そいつまで呼んでしまう可能性があるから、今まで一人で行動していたんだよ。