マー君(原作)

何やら難しい話になってきたが、洋太は口を挟まず、続きを聞いた。

「もしもだが、この話を前提にすれば視覚的感染もありえるかもしれない。きっとそれは暗号か何かの文字列、はたまた何か未知なる物を視覚に入れることで感染するのかもしれない。

光。これは我々の日常にある物だが、それは全てが真実とは限らない。光は簡単に人を騙す。

光はこの世の始まりであり、あらゆる可能性が秘められているのだよ。光があるからこそ、この地球も成り立っている。

そして今だ光の全てを解明できたわけではない。だとしたら、その光に恐ろしい可能性もあるとした?

だとしたら――」

三沢は腕組みを外し、壁から離れた。

「感染者の意識がないとすれば、その意識はどこかに移転した可能性がある。それが例えばネットの世界だとしたら? まあ仮定の話だが。

しかし、感染して意識がなくなっているならその潜在意識は必ずどこか別な場所にあるはずだ。生きている限り、自己の意識は存在する。まあ早い話」

いつものように喉を鳴らし、締めに入る。

「人間世界で言う『ありえない』はただの無知にしか過ぎん。それは絶対的な物ではなく、逃げなのだよ。知識など些細な外的接触により簡単に変容する物さ」

ネットの世界。

洋太は三沢らしい言葉だと思った。

そういえば、昨日上田良一の見舞いに行ったが、あいつ「暗い暗い」とずっと呟いていたが言っていたが、まさかあいつもネットの世界に――。