今思えば、ネットの世界が彼女の全てだったのだろう。

そのことに気づいていたら、こんな事件は起こらなかったかもしれない。

雫がネットの世界と現実を混同しなければ、判断できていたら――こんなことにはならなかっただろう。

あの時の雫は被害妄想が激しく、勝手にありもしない空想の世界を描いていた。

学校に通う自分。

親友がいる自分。

竹村君の自殺を目撃した自分。

ありもしないニュースを見た自分。

雫は現実ではなく、自分が作りだした世界を信じ、それに従った。

彼女自身それを望んでいたかまではわからないが。

警察から聞いた話では、雫はこのまま精神病院に送られるそうだ。

私が・・・・・・私がもっと雫のことを見ていたら−−。

雨は悔しそうに携帯を握り締めた。

仲が悪いと言え、実の妹を救うことができなかった。

妹が助けを求めていたのにも関わらず。

私にはもっと力があれば。

もっと、もっと強い力があれば――。