マー君(原作)

その文字を見ると、自然と怒りが消えた。

「俺って奴は……」

良一は落ち着きを取り戻すと、謝罪の文字を打とうとした。

だが、その前にバッハが打ち込んできた。
 

バッハ> すみません。

でも、この話すーんごく恐いんですよ。

ネット伝説の中のチャットの怪奇話。

それによると、そのマー君がチャットの中にいる人を一人、また一人消していくんです。

 
そこで、良一は始めて寒気を覚えた。

実は良一、自分から怖い話を切り出したのだが、本当はかなりの小心者だった。

その上、こんな話でもすぐに信じてしまう傾向があった。

しかし、鈍感なAIは懲りずに粗い文を打ち込んできた。
 

AI> 消していくって、殺されるってことか?

バッハ> そうです。

チャットに参加している人を殺すんですよ。

一人残らず。

で、殺され方っていうか、まず、マー君が「次はお前だ」って感じに言ってきたら、その人にメールが来るんです。

そのメールを開かないと、その人は次の瞬間、ネットの世界に連れて行かれるとかで。