マー君(原作)

しかし、そんな良一でもチャットのルールは守っている。

彼は椅子に背を預けて、軽く息を吐いた。

自分が打ち込んだら、しばらく見守り、皆の話を聞く。

これがチャットのルールだ。

広美は知り合いだが、AIとバッハは全く面識が無い。

そのため、書き込む時AIとバッハには気を遣っている。

ようやく、皆書き込みだし、良一は目を細めてパソコン画面を見た。
 

広美> バッハさん、どんな話?

AI> できるなら、とびっきり恐いのな。


「AIの野郎、少しは言葉づかい気を付けろ」

そう言いつつ、一瞬でパソコンに文字を打ち込んだ。

 
アツシ> で、どういう話なんですか?

バッハ> マー君って知ってる? これ、最近はやりだした恐い話なんですけど。

 
「マー君?」

良一はそう呟くと同時に同じ言葉を打ち込んでいた。

聞いたことがない話だったが、興味本位でつい話に乗ってしまった。

しかし、この時これが後に恐ろしい悲劇を招くとは知る由もなかった。