ドMな僕と怪力なきみ。




俺は驚いて固まった。



この学校に坂下謙太は二人いない。

ってことは…



(俺…!?)




俺が混乱していると、


「じゃ、あたし授業あるんで失礼します」


藤谷さんがチャラ男先輩を振り切ったみたいだった。



足音が近づいてきて、廊下を曲がったところ、つまり俺の目の前で、彼女は足を止めた。




藤谷さんがにっと笑った。


「覗いてたんだから、これくらいいーよね?坂下クン」

「えっ?もしかして…」

「嘘だよ。」



俺は体から一気に力が抜けていくのを感じた。



「なんてタチの悪い…」

「ウソで残念?」

「うんちょっと……ハッ!いや、ちがくて!」


藤谷さんがクスクス笑った。

「坂下くんっておもしろいね」



う…わ…。


このひと、強気だしやることタチ悪いけど


(まじで可愛い)



笑った顔なんか、とくに。


これならあんなにいっぱいファンができるのもすごい納得だ。