ドMな僕と怪力なきみ。




「そおいっ!」


そのとき、そんな掛け声とともにくじを引くひとがいた。

見ると、坂下くんだった。


(変なかけ声)

わたしは思わず口元を綻ばせた。


そんな彼と委員長の会話が少しだけ聞こえた。

彼は班のメンバーをすごく気にしているみたいだった。



しばらくすると、鈴音ちゃんが戻ってきた。


「おっかえりー!何班だった?」

「Aだよ。今、委員長が黒板にメンバー書いてくれるって」


そんな会話をにこにこして聞きながら、ふと考えている自分に気づいた。


(坂下くんは、何班なのかな。)


元気で明るくてちょっと騒がしい彼。

そんな彼がいる班は、きっと楽しい班になるんだろうな。


そうしているうちに、委員長の水野さんが黒板に字を書き始めた。


(わ…、すごく綺麗な字)



彼女はA班と書いたそのすぐ下に、『彼』の名を書いた。



『坂下謙太』




わたしは、すごくびっくりした。

でも、なんだか嬉しかった。


人見知りなわたしだけど、内気で消極的なわたしだけど、不思議な彼とは話してみたかったから。