「おーい夕上!お前班決まってんの?」
ある男子生徒の声が、教室をざわめかせた。
(なんだろう?)
そう思って見ると、その中心にいたのは
(…!昨日のひと!)
昨日わたしを見て走って行ってしまった人だった。
彼がにこにこ笑っていた。
昨日の何もない土を見つめる恥ずかしい自分を思い出し、顔が熱くなる。
読書をしていた夕上と呼ばれたひとが、本から顔をあげた。
目にかかった前髪が暗い印象を与える人だった。
「…決まってませんが」
「じゃ、俺らと一緒ね!けってーい!!」
遠足の班かな。
彼の、自分にはない強引さと、明るい雰囲気がなんだか眩しい。
「おい、まじかよ謙太お前」
「あんな根暗っぽいやめとけって!」
周りの男子が声をかける。
(人気者なんだな)
昨日の男の子を、じっと見る。
それから、夕上と呼ばれた人をちらりと見た。
周りの反応からすると、彼は皆からあまりよく思われていないんだろう。
わたしも、そうだった。
内向的な性格のわたしは、みんなにではないけれど一部のひとからは「暗い」と言われて嫌われていた。
嫌われると、つらい。
胸がすごく痛くなるんだ。
だからわたしは『夕上くん』に対する周りの態度に胸がずきずきして、俯いた。