わたしも驚いたけれど、彼はそれ以上にびっくりしたようだった。

慌て始めたかと思うと、顔を真っ赤にしてすごいスピードで走っていってしまった。


カランッ


何かが落ちる音で、わたしは我に帰った。

…ジョウロ。


(あ、もしかしてこの花壇の?)

ジョウロからは水が流れていく。


わたしがいたから、水やりできなかったのかな。


(…悪いこと、したな)



もしかして、ずっと、見てたのかな。


そう考えて、ハッと気づく。


(わたし、ひたすらただの土見つめてる変なひとだ!)

だから彼もあんなに必死で逃げたのかも!?


わたしは急にものすごく恥ずかしくなって俯いた。


(とりあえず、彼の代わりに水はあげなきゃな)

そしてゆっくりと、地面に転がるジョウロを拾い上げたのだった。