工場が見えて来た。
あのオバサンが俺達の姿を見つけて、走り寄って来た。
「ねぇ!由香里ちゃんあんた…」
と言って、高宮さんの肩を抱いた。
「由香里ちゃん、悪く思わんでね‥社長も悲しんでたのよ。
社長もなかなか子宝に恵まれなくて、やっと出来た子が楓ちゃんなのよ。
だから、楓ちゃんの言うことは絶対なのよ‥許してやってね‥」
オバサンはすすり泣きながら、高宮さんの頭を撫でた。
「大丈夫です。オバサン、お世話になりました。」
涙も乾ききっていないのに、無理して笑顔を作る高宮さん‥
「すぐには出て行かなくてもいいみたいだから、次の仕事見つかるまでは
ここに居んしゃい。ね?」
俺は、オバサンと高宮さんの間に入り、間を開けずに言う。
「由香里さんの事は俺に任せて下さい。
彼女をもうここに置いておくわけには行きません。」
オバサンは俺の顔を見つめる。
「…そう‥じゃあ、兄ちゃん、頼んだわよ。」
そう言って、俺の肩を叩いた。
「また、いつでも遊びにおいで。」
と高宮さんに言って、仕事へ戻って行った。

