「・・・可哀想に。 全然モテないんだな、オマエ。 ずっとひとりかよ」
半笑いになりながら千秋の方を見ると、
「いちいち親に報告しなかっただけですー!! いましたー!! 山ほど彼氏いましたー!!」
千秋が、聞かされる方が何だか悲しくなる様なホラを吹いた。
「何が『山ほど』だよ。 カルデラだろ、どうせ。 切ない見栄を張るな、嘘吐きが」
「嘘じゃないもん!! ホントだもん!!」
しっかり嘘を見破っているというのに、千秋は認めようとしない。
コイツ、ムキになって言い返しながら恥ずかしくならないのだろうか。
「世の中にブス専の男はそんなにいない。 故に、千秋に男が山ほど集るわけがない。 したがって、千秋の話は大嘘」
そんな千秋にトドメを刺すと、
「~~~~~おかーさーん!!」
言い返せなくなった千秋が、自分の母親の元へ泣きつこうと駆け出した。
「じゃあ、ワタシたち本当に帰りますので。 心配しなくても、私たちは娘の事を1番応援してますから」
が、千秋が辿り着く前に、千秋の母親はオレにニッコリ笑いかけながら会釈をすると、何か納得のいっていない様子の千秋の父親を引っ張りながら歩き出してしまった。
「あの!! 今度改めて挨拶しに行きますから」
千秋の両親の背中に向かって声を掛けると、
「待ってます」
千秋の母親が振り向き、嬉しそうに笑った。



