あ、うっかり千秋褒めてしまった。
コイツ、調子に乗ったらどうしてくれよう。
ゲンコツだな、ゲンコツ。
「・・・ワタシは親ですよ?? 娘が描いた絵を見て、頑張ったかそうでないかなど一目で分かる。 ただ・・・あんな卑猥な絵を描く必要があるのか??」
千秋の父親の言葉に、千秋の顔がまたも曇った。
「・・・まぁ、エロいですよね」
「エロ過ぎるだろう!!」
「フッ」
オレの言葉に反応した千秋の父親に、思わず笑ってしまった。
してやったり。
見事に誘導成功。 引っ掛かったし、千秋の父。
「『エロい』は今の娘さんにとって、最高の褒め言葉だそうですよ」
『ニッ』と笑ってやると、千秋の父親の隣にいた母親が『フフッ』と笑った。
「いじわるね、白木さん。 お父さんだって自分の大事な娘の絵は褒めたいし、沢山の人に見てほしいのよ。 でも、今回は絵が絵だから、見てほしいのに見てほしくなくて、モヤモヤしてるのよ」
「ちがうわ!! 母さん、余計な事言うんじゃない!!」
笑う千秋の母親の隣で、父親の方は焦ったように怒っている。
千秋の父親は亭主関白に見えるけど、実際は奥さんの掌で転がされている様だ。
「なんか、オマエん家いいな」
微笑ましく千秋の両親のやり取りを眺めていると、
「また褒めた。 白木氏って、人をけなす事しか出来ない人だと思ってた」
と千秋がまたこれでもかと目を見開いてオレを見た。
・・・コイツめ。 ゲンコツ決定だな。



