雨の日に、キミと一緒に創るエロ。





 -------------モヤモヤしたまま水曜日を迎えた。

 立ち聞きなんて趣味が悪すぎると分かってはいたがやっぱり気になるオレは、今日の客入りはまずまずだというのに、キッチンには入らずにホールに出る事にした。

 19:00。

 篠崎一家ご来店。

 頑固そうな父親と、優しそうな母親に挟まれた千秋は何だか嬉しそうだった。

 きっと、家族に会うの久々だったのだろう。

 そんな3人を席に案内し、コース料理を順番に運ぶ。

 何度往復し、聞き耳を立てていても、見合いの話は出てこない。

 至って和やか。

 千秋が自慢気に『ここ、何食べても美味しいでしょ??』と鼻を鳴らせば、『ホントねー。 幸せー』と千秋の母親が微笑む横で、父親の方は無言ではあるが、頷きながら黙黙と食べている。

 千秋の両親は、本当に何の理由もなくただ娘に会いに来たようだ。

 親だもんな。 娘には理由なく会いたいもんだよな。

 ラストのドルチェを食べ終え、

 「ワタシ、お会計してくる」

 千秋が立ち上がった時だった。

 「オマエは篠崎千秋だよな?? 篠田冬馬じゃないよな??」