「テメェ、ヒトの店でなんつーモン開いてんだよ!! しかも、声デカイんだよ!!」
『じゃーん!!』じゃねぇだろ!! ばかやろう!!
「イヤイヤイヤ、この前ここでワタシの絵見ながら散々バカにしてたじゃん」
「あん時はお客さん少なかったからだろ!! 今日はおかげさまで大繁盛なんだよ!!」
「・・・何だよ。 じゃあ、いいよ。 早くパスタ持って来てよ」
不貞腐れた千秋が、残念そうに鞄に雑誌をしまおうとした。
「・・・よこせ」
千秋の前に手を出し、上下にパタパタさせた。
本当は見て欲しいんだろうが。
「もういいです。 早くパスタ持って来て下さい」
臍を曲げた千秋は、ほっぺたを膨らませながらそっぽを向いた。
あー。 めんどくさいパターンだ。
女は拗ね出すとタチが悪い。
「よこしなさい」
少々強引に雑誌を奪い取り、後ろから見られぬ様、背中を壁にピッタリつけて、『溺れる人妻』のページを開いた。
アレ?? 千秋の名前が載ってない。
画:篠田 冬馬。
・・・誰。
「『篠田』って誰??」
「あぁ。 青年誌で描く時はその名前にしようと思って。 同じ名前だと、少女誌で描くにも青年誌で描くにも、変なイメージついちゃいそうだから」
千秋に『かっこいい名前でしょ??』と同意を求められたが、顔と名前がかけ離れすぎていて、 全然しっくりこない。



