「・・・小松菜とベーコンのコンソメパスタ」
振り切れてテンションの高い千秋に戸惑い、『いらっしゃいませ』と言うのも忘れる。
「ひゅー。 美味しそ!! じゃあ、日替わりパスタを1つお願いしまーす?」
千秋はオレの案内も待たずに、ズカズカ『特等席』へ歩いて行き、勝手に座った。
何なんだ、千秋のこのテンションは。
『ひゅー』っつったよ、この女。
とりあえず水とグラスを用意して千秋の席に行くと、千秋がニッコニコな笑顔でオレを見た。
イヤ、違う。 『ニヤニヤ』だ。
「白木氏、白木氏」
「・・・何??」
千秋があまりに気持ち悪いので、冷めた視線で返事をする。
そんなオレの引き具合などお構いなしに、千秋は自分の鞄から雑誌を取り出すと、1発で開けるようにする為であろう、ポストイットを貼り付けていたページに手をかけた。
「じゃーん!! 今日発売の『溺れる人妻』第1話でーす!!」
千秋が勢いよく開いたページを、即座に閉じてやった。



