黒薔薇王子




あたし………その噂の"王子様"に会っちゃったんだ………。


何を隠そう、クラスの女子がその噂を毎日のようにしてたから知ってるのであって、実際に見たことはなかったんだ。




あの漆黒の目に吸い込まれそうだった………。




噂どおり優しかったし、何よりあの笑顔は天使のようだった。


あたしの手の中にある黒い折りたたみ傘を見る。




あたし、"王子様"と関わっちゃった………。




折りたたみ傘を借りたことが知れ渡れば、学年中……いや、学校中の女子に目の敵にされてしまうかもしれない。


でも………なんか嬉しいな。


口元が緩むのとほぼ同時に、傘をさした。