2週間前のこと。


「きゃあっ!」


私が教室に入ってきた時だった。


一人の女子の声が聞こえた。


「ほら、早くこれで自分の髪の毛切りなよ~。」


「ちょ、やりすぎなんじゃない杞憂(きゆう)~(笑)」


その女の子の周りには、数人の女子がかたまっていた。


ハサミを差し出すリーダー的存在の女子。


坂本 杞憂(さかもと きゆう)。


ターゲットにされているのが


園田 唯(そのだ ゆい)。


「自分で切らないって言うんならあたしが切ってあげる~!」


杞憂が言う。


クラスのみんなはそれを見てクスクス笑っていた。


 ……なんで?


 なんでこんなことが起きてるの?


 なんで……誰も助けないの?


唯の髪の毛をわしづかみにして、杞憂はハサミの刃を広げた。


「いやあああああああ!!」


唯ちゃんの叫び声と同時に、

「……っ!!やめてっっっ!!!」


とっさに私は、そう言って唯ちゃんの前に立っていた。