とそこへ、一徳さんを乗せた車椅子を引いて、志賀さんがやって来た。
志賀さんは花恵さんをその視界に入れると、ハッと何か思い出したように身体を小さく跳ねさせ、そしてゆるゆると花恵さんから私へ視線を移した。
「薬師丸さん、ごめん。國枝くんから聞いてない?」
「何をですか?」
恐る恐る尋ね返す。嫌な予感がする、すごく……。
「沼井さん、血圧70台だったから、リハ中止したって」
ああ、もう……。どうしてそれ、すぐに伝えてくれないの?
70代って言ったら、正真正銘、低血圧じゃん。米山が引き留めなかったら私、お風呂へ連れてっちゃうとこだったじゃん。
しっかりしてくれよ、責任者ぁ。
「一旦、ベッドで休んで貰って様子見たら? 伝えるの遅くなっちゃって、ほんと、ごめんなさいね」
体裁っぽい謝罪を口にして、志賀さんは誤魔化すように苦笑した。
その時丁度、エレベーターの扉が開いた。すかさず、一徳さんと共に逃げるように中へと乗り込んだ志賀さんは、薄っすらと苦笑を浮かべたまま、閉まる扉に呑み込まれて消えた。
志賀さんは花恵さんをその視界に入れると、ハッと何か思い出したように身体を小さく跳ねさせ、そしてゆるゆると花恵さんから私へ視線を移した。
「薬師丸さん、ごめん。國枝くんから聞いてない?」
「何をですか?」
恐る恐る尋ね返す。嫌な予感がする、すごく……。
「沼井さん、血圧70台だったから、リハ中止したって」
ああ、もう……。どうしてそれ、すぐに伝えてくれないの?
70代って言ったら、正真正銘、低血圧じゃん。米山が引き留めなかったら私、お風呂へ連れてっちゃうとこだったじゃん。
しっかりしてくれよ、責任者ぁ。
「一旦、ベッドで休んで貰って様子見たら? 伝えるの遅くなっちゃって、ほんと、ごめんなさいね」
体裁っぽい謝罪を口にして、志賀さんは誤魔化すように苦笑した。
その時丁度、エレベーターの扉が開いた。すかさず、一徳さんと共に逃げるように中へと乗り込んだ志賀さんは、薄っすらと苦笑を浮かべたまま、閉まる扉に呑み込まれて消えた。



