結局――
お泊りはさせて貰えなかった。
何故かというと、メイク落としが要るからコンビニへ行くと私が大騒ぎをして、だけどもコンビニは駅まで行かないとないらしく。
駅行くなら、ついでに電車に乗って自分ち帰れよ、と米山に言われてしまったのである。
全然ついでじゃないし。
くっそぉ……化粧なんかしていなければ……。
化粧を落とさずに寝たら、三歳老けるんだよ。三歳老けたら私は31歳、三十路越えちゃうんだよ。
ちっきしょぉ……。
でも米山は、わざわざ一緒に電車に乗って、私の自宅まで送ってくれた。
最寄駅は吹きさらしで、待合室もない。
一応、腰掛ける場所はあったけど、座ったらきっと余計に寒い。だから、米山と並んで立ったまま、8分後に来るはずの電車を待った。
「さっぶ……」
思わず漏らした声には、ビブラートがかかっていた。
両腕で自分を抱きしめたら、思った以上に私の身体は震えていた。
隣の米山がそんな私を横目で見下げ、
「入るか?」
と、着ているダウンジャケット前面を両手で左右に開いて見せた。



