「いえ、大丈夫です! これからもどんどん頼んでください。役に立てて嬉しいんです。幸せなんです。自分の仕事はその合間にいくらでもできますから! また怒られても、何度でも言い返してやります。全然平気です」

必死になって訴えた。

「ほんとに大丈夫?」

向山さんたち三人が心配そうに私を見ている。うんうん、と力強く首肯してから全力で笑ってみせた。

「カッコいいね、米山さん」

通りがかった宇留野さんが冷やかすように言ってくる。相変わらずだね君は。

「遅くなったけど、おめでとう。どう? 梅森さんと仲良くやってる?」

私も冷やかし返す。

「もうほんっと最高だって。不思議なんだけど、薫ちゃんが我儘言っても、ぜーんぜんめんどくさくないんだわ」

「それが愛ってやつさ」

「さっすが、先輩!」

お互い自然に笑顔になる。


この世界は、愛に溢れている。愛と平和を守るためには、時には言い辛いことも言わなきゃならない。

本来、人の心を傷つけるようなことを言ってはいけないけど、でも結果的にその人が幸になるのだとしたら、心を鬼にして言わなきゃならないこともある。一時の傷心で輝く未来が約束されるなら、それを避けて永遠に不幸でいるよりずっといいじゃない。

ねぇ、浩平?

今日も我が家に帰れば浩平が居る。靴を脱ぐ時間すらもどかしいぐらい、浩平に早く会いたくて仕方がない。玄関に乱暴に脱ぎ捨ててキッチンへ向かうと、エプロン姿の浩平が振り返る。

「おかえり」

「ただいま」




2023.7.18 Fin.