「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」

見るに見かねた様子の向山さんが、口を挟む。

「早川さん、どうしちゃったの? 二人も言ってるけど、そんな訳ないじゃない。だし、米山さんには素敵な旦那さんがいるでしょ?」

「素敵ですか? はっきり言って、あんまりカッコ良くないですよね? だから、カッコイイ宇留野さんに、ちょっと惹かれちゃってるんじゃないですか?」

早川さんは、頑として引かない。完全に自分を見失っている。それって、看護師としてどうよ? と思う。


向山さんは、極自然な感じで早川さんの肩を抱き、

「結婚を決める時ってね、大抵が、『この人以外、考えられない!』ってぐらいの気持ちなのよ。だから、結婚してる人の気持ちは、そんな簡単に揺らいだりしないよ。新婚さんなら、尚更でしょ」

優しく諭すように言う。

それでも納得できない様子の早川さん。とうとう目に涙を湛え、下唇を噛みしめた。


「これだけは言っときたいんだけど、」

宇留野さんが、珍しく真顔で言葉を発っした。

「米山さんの旦那、俺、実物見たんだけど――もちろん、偶然ね――めちゃくちゃカッコいいよ? 男の俺が見てもそう思うんだから、よっぽどでしょ。あれは相当モテるね。気を付けた方がいいよ、米山さん」

結局最後は、フザけたニヤけ顔。本気なんだか、冗談なんだか、判断し難い。でも、康平のことを褒められて、悪い気はしなかった。


そして、宇留野さんは続ける。

「俺に好意を持ってくれてるのは、素直に嬉しいよ。早川さん、可愛いし。でも今の聞いて、俺の外見だけが好きなんだなって思っちゃったかな」

「そんなことないです! 宇留野さん、仕事もできるし、怖そうだけど優しいし。時々言う冗談も面白いし、本当に、私の理想なんです。ずっと好きだったんです」

しんと静まりかえる室内。